シタールギター

シタールギターという楽器をご存知ですか。一般にはエレキシタールと呼ばれる楽器で、見た目は普通のエレキギターとさほど変わりませんが、出てくる音はまぎれもなくインドの伝統弦楽器シタールのものです。まず、このエレキシタールが開発された経緯について書いてみます。

歴史ある伝統楽器エレキシタール

60年代中盤から後半のロックは、サイケデリックムーブメントに涌いていました。そこではさまざまな音楽的実験が試みられ、オリエンタルな音楽の導入ということも図られました。そこで多くのミュージシャンが注目したのがインド音楽だったのです。

その代表的な一人に、ビートルズのジョージ・ハリスンがいます。ジョージ・ハリスンはインドの代表的シタール奏者ラビィ・シャンカールに師事し、シタールの奏法をマスターしました。ジョージ・ハリスンのシタール・プレイが聞ける曲としては、1967年発売のビートルズのアルバム『Sgt. Peppers’ Lonely Hearts Club Band』に収録されている「Within You Without You」が有名です。当時、この曲はロック界に強いインパクトを与え以降、シタールやインドの打楽器であるタブラなどを用いたロックはラーガロックと呼ばれるようになります。

こうした流れを受けてアメリカのギターメイカーであるダンエレクトロ社は、1967年、エレキギターのようにピックアップを搭載し、アンプに通して弾くことのできるエレキシタール、Coral Sitarというモデルを販売します。以下、エレキシタールの構造、特徴はこのモデルに則って説明します。一番最初にも書きましたが、エレキシタールは伝統的なシタールと違って、見た目は普通のエレキギターと変わりません。では、なにが違うのでしょうか。

エレキシタールの特徴

まず大きな特徴がブリッジにあります。普通のギターの場合、ブリッジは弦を固定するためにありますが、エレキシタールの場合、大型のブリッジが着いていて、それは弦を一本いっぽん通す谷間のような感じになっています。そしてピックで弦を弾いた時に、谷間と弦が微妙に触れることによって、ビブラート効果を生み出すのです。

さらにエレキシタールには直接指で弾く６本の弦の他にも、ボディの上部に13弦の共鳴弦が着いています。これは直接弾いた弦の音が振動として伝わることで鳴る弦で、伝統的なシタールも指で直接弾く7本の弦の他に13弦の共鳴弦があります。この共鳴作用がシタール独特の音色を生み出すのです。

エレキシタールのチューニングは普通のエレキギターと同じで、Coral Sitarの場合は、ダンエレクトロ社特有のリップスティック型ピックアップが2本搭載されていて、それぞれにボリュームボタン、トーンボタンが着いています。

日本の場合、このエレキシタールが導入された時期は意外にはやく、1968年発売のザ・スパイダースのアルバム『明治百年、すぱいだーす七年』に収録されている「黒ゆりの詩」ではやくも聞くことができます。また1971年発売のフラワー・トラベリン・バンドのアルバム『SATORI』においては、ギタリストの石間英樹がエレキシタールの音を縦横に響かせています。石間英樹はその後、エレキシタールを改良したオリジナルの楽器・シターラを開発し現在でも活躍しています。この時期の日本のエレキシタールの使用方を見ても、サイケデリックムーブメントからの影響は強く感じます。

エレキギターでシタールの音を・・・

最後に蛇足になるかもしれませんが、普通のエレキギターでエレキシタールの音を再現できる方法を紹介します。ギターエフェクターメーカーのエレクロトロハーモニクス社が発売しているRavish Sitarというエフェクターは優れものです。他のエフェクターと同様に、シールドを通してギターとアンプをつなぐだけでエレキシタールの音が鳴ります。この場合、エフェクターの果たしている役割はエレキシタールにおける共鳴弦の作用を再現してると思えます。

エキゾチックで他のギターでは味わえない音色を、エレキシタールで試してみてはいかがでしょうか。